「月刊アクリル運動部第2号」ゲスト:少年野球 大阪柏原ボーイズ監督 大谷昌之

月刊アクリル運動部、第2号テーマは「少年野球」

スポーツを「する」のも、「見る」のも大好き。アクリル運動部総監督・稲垣圭悟が「する」「見る」に加え、スポーツを「聞いて」「伝える」のが「月刊アクリル運動部」の目的です。

アスリートはもちろん、指導者、関係団体など、さまざまな立場でスポーツに関わっている方にお話をうかがいます。華やかな面や楽しい話題だけでなく、シビアな問題や、業界が抱える課題など、裏話的な内容も盛り込んだ、ひと味違うインタビューを目指します。

ていねいにお話をうかがい、事実や思いを広く伝えることで、競技に対する認識を深め、いい部分をもっと伸ばし、同時に困っている点を改善・解消する。そんなお手伝いや提案をしていきたいと考えています。

 

中学校の同級生!? 大谷監督にインタビュー

 

さて、第2回を迎えた「月刊アクリル運動部」。

今回は少年野球「ボーイズリーグ」で長年指導されている、大阪柏原ボーイズ監督の大谷昌之氏にお話をうかがいました。実は大谷監督と僕は大阪明星学園中学校時代の同級生です。大谷監督は野球部、僕はサッカー部と、部活は違いましたが、隣り合わせのグラウンドで汗を流した関係です。
もちろん「月刊アクリル運動部」としてのマジメなインタビューではありますが、つい友人同士の会話になってしまう部分もあります。今回は「友人同士の掛け合い」も多分に含まれているという関係上、いつもよりもざっくばらんに、あえて僕たちが普段使っている大阪弁でお送りします。また、会話の中では「大谷監督」ではなく、「大谷くん」としてお話させてもらっています。
とくに関西以外の方にとっては、読みにくい部分もあるかもしれませんが、会話の様子をできるだけリアルにお伝えしたいという意図のため、どうぞよろしくお願いします。

中学校時代からよく知っていた大谷監督。アクリル運動部の活動をしている際に声をかけてもらったのをきっかけに、ちょくちょくグラウンドに足を運ぶようになりました。
大谷監督は、少年野球の監督が本業ではありません。本業のかたわらで、少年たちの指導にたずさわっているのです。最初は単に「すごいなぁ」「がんばるな」という感想に近かったかもしれません。しかし彼をはじめとする指導者、野球少年たちや保護者の方々、そんなグラウンドに集まる人たちを見ていて、気持ちに変化が芽生えてきたんです。興味がわいてきたというと、失礼なのかもしれませんが、猛烈に話を聞いてみたい! と想ったとでもいうのか。

現在進行形でがんばっている少年野球チーム「大阪柏原ボーイズ」。そんなチームから、どうして古き善き日本を感じるのか? 「月刊アクリル運動部第2号」では、高校野球でもなくプロ野球でもなく、少年野球チーム「大阪柏原ボーイズ」と、そこに関わるみなさんにスポットを当ててお届けします。

 

目次

  • 中学校の同級生!? 大谷監督にインタビュー
  • 「ボーイズリーグ」って、どんな団体?
  • 「世界大会」や「日本代表」もひとつじゃない
  • 解説 少年野球リーグをかんたんにご紹介
  • 少年野球の実情とは? 「活動費」ってどうなってるの?
  • 監督になったのは、実は成り行き!?
  • 少年野球の進路は? 高校野球とのかかわり
  • 「特待生」制度や越境入学、高校野球への進学情勢
  • プロにさえなれば、野球で飯が食えるのか?
  • 「野球の監督」って道も相当険しい
  • 「野球を教える」ことが監督として何より大事
  • チームを通じて「一緒に子育てする」気持ちで
  • インタビューを終えて
  • プロフィール

 

 

大阪柏原ボーイズ監督 大谷氏

 

「ボーイズリーグ」って、どんな団体?

 

またまた前置きが長くなってしまいましたが、気持ちを込めたインタビュー、ついつい夢中になってしまいます。明星中学時代の写真を見て盛り上がりつつ、和気藹々とお話はスタートしました。

「少年野球」という言葉を聞いて、どんな想像をされますか? 小学生の野球を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。本来は小学生の野球は「学童野球」と呼び、「少年野球」は中学生の野球を指すようです。しかし、日常的な用語としては、小中学生の野球全般を「少年野球」と呼ぶことが多いようです。
高校生の野球というと、「目指すは甲子園」であり、硬球を使うのが主流です。しかし少年野球となると、硬式だけでなく、軟式、準硬式、そしてソフトボールと、さまざまな球種によって展開されているようです。
大谷監督率いる「大阪柏原ボーイズ」は「ボーイズリーグ」。まずはボーイズリーグとは何か? からはじめましょう。

 

稲垣:まずはここから、しっかり聞いておかないと。「ボーイズリーグ」ってどんな組織なの?

大谷:「ボーイズリーグ」は愛称で、「公益財団法人日本少年野球連盟」が正式名称。全国で39支部あって、小学生の部、中学生の部あわせて、740チームくらいかな。

稲垣:僕の生まれ育ったのは八尾市なので、「リトルリーグ」が盛んだったけど…… 「リトルリーグ」と「ボーイズリーグ」って違うよね?

大谷:「リトルリーグ」は関東を中心にした、大きな小学生野球の組織。中学生はリトルの兄貴分ということで「リトルシニアリーグ」って呼ばれてる。それに対してボーイズリーグは関西が中心で、「ボーイズリーグ小学生の部(小学部)」と「中学生の部(中学部)」にわかれてる。

稲垣:やっぱり違うんや!

大谷:でも実は、ボーイズリーグとリトルリーグだけじゃない。ほかにも「ポニー」「サン」「フレッシュ」「ジャパン」「ヤング」って団体があるねん。

稲垣:そんなにあんの!

大谷:うん、サンリーグは最近ボーイズリーグにくっついたけど、それでもいろんな種類があるね。ボーイズリーグは本部は大阪にある。リトルシニアは東京に本部がある。このふたつが2大組織やね。

稲垣:そのふたつは聞いたことあるもんな。

大谷:ボーイズリーグは、南海ホークスの監督やった鶴岡一人さんが理事長になって大きく成長した。

稲垣:使っているボールはどうなん? リトルリーグとリトルシニアは、昔は準硬式やった気がするけど。

大谷:今はリトルリーグもリトルシニアも硬式になったで。

稲垣:リトルルーグとか、ボーイズリーグっていうのは学校とは関係ないチームやろ。でも、中学校にも「野球部」があるよね。中学校の野球部はどうなってるの?

大谷:中学校の野球部は、ほとんど軟式野球。たまに準硬式の学校もあるね。だから、リトルやボーイズとは、使っているボールが違うんや。

 

大阪柏原ボーイズの選手のみなさん〔見学に来た小学生も一緒にパシャリ(笑)〕

 

「世界大会」や「日本代表」もひとつじゃない

 

稲垣:「少年野球の世界大会」とか聞いたことあるけど、どういうシステム? 「甲子園!」みたいな、わかりやすい目標があるんかな?

大谷:これがまたややこしいねん。ボーイズだけの世界大会もあるし、リトルシニアだけの世界大会もある。ただ日本の野球界のトップは「日本野球連盟」なので、ここで選ばれた選手の世界大会が公式かな(笑)。

稲垣:日本野球連盟が関係してくるんや!

大谷:日本野球連盟の世界大会は、中学校を「AA(ダブルA)」、高校を「AAA(トリプルA)」って呼ぶねん。侍ジャパンU-15、U-18や。

稲垣:なるほどね、日本野球連盟が行う世界大会があって、それとは別に、ボーイズでもリトルシニアでも、各リーグがばらばらに世界大会をしてるってことやね。

大谷:そう、いろんな大会の中で、日本野球連盟の日本代表が一番権威があるって感じ。

稲垣:ほーお。

大谷:さらにU-15を対称にした「野茂ジャパン」っていうのもある。元メジャーリーガーの野茂英雄氏が「NOMOベースボールクラブ」を設立したのは知ってる人も多いかな?

稲垣:プロ野球選手を輩出したりしてるやつな。

大谷:そうそう、今度はメジャーリーグの経験を生かして、全国から中学生15人を選んで、アメリカのチームと対戦したり、ホームステイしたりする活動をはじめた。子供たちにメジャーリーグや、アメリカを体験させようっちゅうわけや。これを通称「野茂ジャパン」て呼んでる。

稲垣:選抜された精鋭が「野茂ジャパン」やね。

大谷:この「野茂ジャパン」の選手は、ボーイズリーグから主に選出してるねん。うちの選手、中道は野茂ジャパンではなく!侍ジャパンU-15のAA(ダブルA)に選ばれてな、阪神の藤波と一緒やった。そのときのユニフォームはこれやで!

 

当時、中道選手がまとったU-15日本代表(AAダブルA)のユニフォーム

※この中道くんって、何を隠そう、2016年プロ野球ドラフト会議で、オリックスバファローズに育成の5位指名を受けた明治大学の中道勝士くんのこと。プロになる子はさすがに珍しいですけど、大阪柏原ボーイズのOBには、甲子園で活躍している選手がたくさんいます。

 

稲垣:連盟ごとに「日本代表」って名乗るの? そんないっぱい日本代表がいて大丈夫?

大谷:いいねん。そうなってるねん。韓国とかに日本代表としていくチームもあるよ。

稲垣:めちゃめちゃややこしいな。

大谷:でも結局は「AA」かな? すべての団体から選出されるから、「AAこそが真の日本代表」みたいなところがある。権威の面でも一番かな。

稲垣:ほーお。

※日本代表の愛称は「侍ジャパン」なのはよく知られていますが、2013年からは全世代で日本代表が選出されています。「AA」はU-15日本代表という意味。うーん、かなり複雑ですね(笑)

 

解説 少年野球リーグをかんたんにご紹介

 

ボーイズリーグは関西を中心に活動していますが、他の都道府県にもチームがあります。サンリーグと連携したことにより、今は全国すべての都道府県にボーイズリーグのチームがある、全国的な組織になりました。
有名なリトルシニアリーグ以外の他のリーグもそれぞれ活動が盛んな地域が違います。他の主だったリーグをかんたんにご紹介します。


ポニーリーグ……一般社団法人 日本ポニーベースボール協会

本部:東京
活動エリア:北海道、関東、関西、九州、沖縄

フレッシュリーグ……九州硬式少年野球協会
活動エリア:九州

ジャパンリーグ……日本硬式少年野球連盟
本部:福岡県
活動エリア:福岡県、佐賀県

ヤングリーグ……一般社団法人 全日本少年硬式野球連盟
本部:兵庫県
活動エリア:東日本、中日本、関西、中四国、九州・沖縄

 

手作りだと思われるクラブハウス

 

少年野球の実情とは? 「活動費」ってどうなってるの?

 

稲垣:大阪柏原ボーイズの歴史は?

大谷:50年くらいやね。

稲垣:「くらい」っていうのは?

大谷:もともとは「オール柏原」というチームやったけど、一度解散してる。その後、あらためて同じ代表が大阪柏原ボーイズを作った。だからだいたい50年くらいかな。

稲垣:選手は何人くらいいるの?

大谷:2年生が13名、1年生が11名やね。

稲垣:人数だけ聞いてもよくわからんのやけど、結構多いほうになるの?

大谷:まあ普通かな? うちは「1学年15人以上は取らない」って決めてるから。だから毎年このくらいかな。人数制限はチームによってあったり、なかったりするけど、うちは15人って決めてる。

稲垣:月謝はいくらくらい?

大谷:月1万3000円。でもこれは「月謝」って意味合いのお金じゃないねん。

稲垣:「用具代」とかってこと?

大谷:用具代っていうか「活動費」かな? 「それが月謝や」っていう人もいると思うけど、誰かが儲けてるってことではなくて、選手が最低限活動するために必要な活動費。純粋に野球チームを維持するのにかかる経費って感じかな。

稲垣:内訳的にはどんな感じなの?

大谷:主にはグランドの家賃、ナイターの照明代、バスの維持費にあてられてる。それとは別に、父母会費が月額3000円。

稲垣:月1万3000円で十分足りてるの?

大谷:マジメな話、選手ひとり1万3000円でも全然足らないよ。

稲垣:それやったら、どうやってるの?

大谷:かんたんにいうと、「協賛金」やね。

稲垣:なるほど、チームを支援してもらうって感じか。

大谷:具体的には、チームでプライベートの大会を主催して、その大会の冊子を作る。そこに企業の広告を掲載することを条件に、協賛金を集めさせてもらう。もちろん大会の運営費にもあてるんやけど、残ったお金は活動費の中に入れさせてもらって、なんとかやりくりをする

稲垣:運営費だけでもギリギリなんやね。でも、スタッフもいてるやん。スタッフさんのギャランティはどうしてるの?

大谷:ないない! ノーギャラや(笑)

稲垣:うそーーー!!

大谷:ギャラどころか、持ち出しのほうが多いくらいやで!

稲垣:えーーーーー!!

 

この写真自薦です!ちょっとだけ編集しました(笑)

 

監督になったのは、実は成り行き!?

 

稲垣:僕らが子供の頃って、野球全盛期やったやん。その頃、野球って近所のおっちゃんが教えてくれるもんやったよな。野球好きのおっちゃんが、そのままコーチやってくれる、みたいな世界。

大谷:そうやな。うちのチームも同じようなもんかも。6人くらいコーチいるけど、全員ボランティア。試合ができるグランドも持ってないから、全部相手のとこ行って試合するねん。

稲垣:試合は毎回遠征?

大谷:全部遠征。県外に行くことも多いから、交通費も大変なん。高速代は父母会費から出しているけど、ガソリン代は自腹。子供たちはバスに乗せて父兄に運転してもらって、俺は自分の車にコーチを乗せて連れて行くねん。全部自腹やで(笑)

稲垣:なんか、スポーツの原点みたいな話やな。

大谷:そうかもしれんな。

稲垣:練習は週に何回くらい?

大谷:基本は火曜、木曜、土・日・祝やけど、年間15大会くらい参加するから、週末は試合に行くことも多いね。公式戦は3大会やけど、それ以外もたくさんあるねん。

稲垣:めちゃくちゃ多いな。月1回以上は大会があるねんな。

大谷:うん。大会数にも規定があって、「年間15大会まで」って決まってるんやけど、目一杯参加してる(笑)

稲垣:すごいとしかいいようがないわ! 参加している子供たちは、だいたい柏原の子やんな?

大谷:昔は「バンダリー制度」というのがあったんやけど……

「バンダリー制度」っていうのは、かんたんにいうと「地域の子は地域のチームに所属しなさい」っていう決まりやね。でも、それが廃止されたから、今はどのチームも、どこの地域からでも参加できる。

 

稲垣:ってことは、柏原市以外の子も多いのか。

大谷:そうやね。大阪柏原ボーイズにもよその地域から選手が入ってくる。今は、柏原市以外の子が多いかな。

稲垣:ほんまかいな! 僕が「ガンバ大阪」でコーチをしていた頃は、ガンバジュニアからはガンバ大阪のジュニアユースに上がれる確率が高かったから、かなり遠いところから通う子も多かったけど。大阪柏原ボーイズってすごいチームなんや!

大谷:(笑)

稲垣:で、なんで少年野球に関わるようになったん?

大谷:当時付き合ってた彼女の子供が野球してたんで、教えてたんよ。ちょうど友達がやってる小学校のチームがあったから、まずはそこに入れて、そこからこのチームに入ったわけよ。

稲垣:当時の彼女って……(笑)

大谷:最初は父兄として手伝ってたんやけど、「野球経験者なんやったら」と、コーチになって、その翌年には監督になっててん(笑)。それからもう13年くらいかな? 監督業も長くなったよな。

稲垣:なるほどね、いや、でもこの話、ちょっと書きにくいわ~(笑)

大谷:(笑)

稲垣:大阪柏原ボーイズのスタッフはみんなボランティアって聞いたけど、よそのチームもほとんどそうなん?

大谷:いや、ボランティアが多いとは思うけど、給料が出てるところもあるよ。

稲垣:クラブ組織として?

大谷:そうやで。

稲垣:でも、クラブ組織として運営するのって並大抵じゃないやん。これだけの人数のコーチを抱えて、給料払っていこうと思ったら、まず選手の人数を増やさないと成り立たないやんか

大谷:そうやねん。とくに大きなグラウンド持ってるところは大変。グラウンドの維持費を捻出するだけでも、「選手を最低このくらい抱えないと回らない」ってラインが出てくるやろ?

稲垣:経費が縛りになってしまうってことかな?

大谷:最近は少子化で子供自体も減ってるし、ほかの競技をする子も多いから、野球人口の確保が大変。チームを維持していくのがなかなかむずかしくなってるみたいや。

稲垣:大阪柏原ボーイズでも、クラブ組織みたいにやろうと思ったら、小学部作らんとあかんやん。

大谷:うーん。運営のことを考えたら、そうかもしらんね。でも俺は小学生に硬式やらすのは反対やねん。

稲垣:軟式やったらいいってこと?

大谷:まあそれもあるけど。小学生は野球を楽しくやらなあかんと思うねん。

稲垣:なるほどね、それは激しく同感!

 

 

遠征に欠かせない大型バス

 

 

少年野球の進路は? 高校野球とのかかわり

 

稲垣:少年野球、というか、中学校の年代の子供たちの進路って、どんな道があるの?

大谷:卒業後、どう進んでいくか? ってことやね。

稲垣:サッカーの場合だと、「トレセン(トレーニングセンター)」ってシステムがあるねん。U-12くらいの年代から、有望な選手がいたらトレセンで選抜していく。つまり「将来有望な子どもたちを囲い込む」ってこと。

大谷:選抜したメンバーが所属する感じやね。

稲垣:大阪府でいうと三島、豊能、北河内、中河内、南河内、泉南、泉北といった地区トレセンにまず選ばれる。その中からさらに、大阪府トレセン、そして関西の府県から選抜される関西トレセン、そして全国の地域から選抜するナショナルトレセンというのが、各年代ごとにある。

大谷:上に進んでいくシステムが、機能してんねんな。

稲垣:そうそう。だから、「彗星のごとく凄い選手があらわれた!」っていうのはあんまりなくて、だいたい知った子ばっかりになっていく。そこで埋もれてしまったとしても、高校サッカーなどで活躍すると、今度は「高校選抜」に入るから、有望な選手はパッと目に付いてわかりやすくなってるねん。

大谷:環境ができあがってるね。

稲垣:野球は「トレセン」とか聞かないけど、どうやって選手を発掘するの?

大谷:野球は主にスカウトやな。うちらが主催するプライベート大会のバックネット裏にも高校のスカウトが来るよ。いい子は、いろんな高校からオファーをもらってます。

稲垣:ボーイズリーグの選抜とかはないの

大谷:ボーイズリーグには、ブロック選抜チームによる全国大会「鶴岡一人杯」というのがあって、全国から優秀な選手が集まる。リトルシニアリーグも同じような全国大会が開催されてるよ。

稲垣:リーグごとにバラバラじゃなくて、全部が一堂に会する大会はないの?

大谷:そういうのもある。「ジャイアンツカップ」っていうのがあるねん。

稲垣:「ジャイアンツカップ」!

大谷:ボーイズリーグ、リトルシニアリーグなど、硬式野球をやっているほとんどのリーグが参加する全国大会で、日本野球連盟公認の全日本中学野球選手権大会やねん。通称が「ジャイアンツカップ」。

稲垣:それが日本一なんや!

大谷:うん、名実ともに日本一を争う大会として定着しているよ。硬式の大会やから、中学校は参加しないけどね。

稲垣:ここでもジャイアンツなんやな(笑)

大谷:(笑)。ジャイアンツカップに出られへんかったチームが参加する大会もあるよ。近畿やったら「バファローズカップ」。

稲垣:またまた複雑やなあー

 

※「カップ戦・全国大会について」

プロ野球の各球団が地域とタイアップして少年野球のカップ戦を開催しているようです。硬式野球で、全国一番を決める大会は「ジャイアンツカップ」となっているようです。

 

大谷:各大会ごとに、使えるグローブやバットにも規制があったりするねんで

稲垣:どういうこと?

大谷:大会を開催するときに、いろんな企業が協賛してくれるねん。要はミズノとか、そういうスポーツメーカーがお金を出してくれるねんけど、そのかわり、ミズノが協賛ならミズノのスポーツ用品以外は使用したらあかんとか、決まりがあんねん。

稲垣:へぇ、チェックとかされんの?

大谷:毎回試合前に道具の検査があるねん(笑) 年間いっぱいお金出してくれてるから、当然ではあるんやけど。

 

稲垣:ちょっと話が戻るけど、野球の強い有名な高校に行くためには、ボーイズリーグ、リトルシニアリーグ、中学校とどこにいけば近道なん?

大谷:うーん…… むずかしいな。能力がすごく高い子は、どこに行っても、何をしてても目立つから関係ないけど、有名校を狙ってる子はやっぱりボーイズかシニアに行く子が多いかな。

稲垣:大阪柏原ボーイズにもたくさんスカウトが来るんやんな?

大谷:うん、高校のスカウトさんとか、監督さんがふらっと見に来てくれはるで。

稲垣:高校にはクラブチームとかはないんやろ? インターハイもないし。

大谷:ないない。高校は「甲子園」がすべて。インターハイの代わりに国体があるけど……。国体はな、思い出づくりや。

 

 

各プロ野球の冠がついた大会がある

 

 

「特待生」制度や越境入学、高校野球への進学情勢

 

稲垣:特待生とかやっぱりあるの? 私学の特待が問題なってた時もあったけど……

大谷:あるある! おおっぴらにはできへんけどな、一学年5名までと決められてるからな(笑)

 

※野球特待生制度

一部の高校による選手の囲い込みに近い特待制度の乱用を抑制するため、日本高等学校野球連盟(高野連:加盟校4014)は一学年5名までとする「野球特待生制度」を設け、届出を義務付けているようです。軟式野球も高野連に属するので例外ではありません。

 

大谷:野球の技術で特待生になる道もあるけど、勉強で特待生になる方法もあるからな。野球が上手くて勉強ができる子もいるわけや、そういう子は勉強で特待生になればいいねん。

稲垣:お金は?

大谷:ほぼ寮費のみ、食費やね。前後はあるけど、だいたい6万くらい。入学金、授業料はほぼほぼ免除や。強豪校になると道具もメーカーが提供してくれる。

稲垣:メジャーリーガーのマー君(田中将大選手)は伊丹市出身やろ?

大谷:そうそう、「宝塚ボーイズ出身」やけど、いろいろあって北海道の駒澤大学付属苫小牧高校に進んでん。

稲垣:そうやんな。そういう例でもあるように、関西、特に大阪の子は今でも全国の高校に野球で進学してんの?

大谷:昔は大阪の中学生が全国でもトップクラスやったけど、今はほかの地域も負けてないよ。昔は「高校野球は大阪が強い」「関西が強い」「西の方が強い」っていわれてたけど、今はどっこいどっこいやで。

稲垣:最近は東北の高校なんかでもかなり強くなってきてるよね

大谷:そやで。でも、以前は青森県の八戸学院光星とか青森山田なんかは、大阪出身の子がすごく多かってん。

稲垣:そうなんや。

大谷:今はそうでもなくなってる。いろいろ問題にもなるから、関西から東北とか、あんまり遠いところの子を入れるのは自粛してるね。

稲垣:有望な選手に進学してもらうっていうのは、学校のためにも大事なんやろ?

大谷:うん、甲子園なんてひとりの選手がすごかったら行けるもんちゃうからな。友達に恵まれて、はじめて行けるもんやと思う。どんだけ自分一人ずば抜けてても、ほかの8人の力がなかったら行かれへんからな。

稲垣:野球を続けるうえで、どの高校に進学するか? っていうのは、どこで判断するの?

大谷:指導者ちゃうかな?

稲垣:大学は? 最近体育系の大学も増えたようやけど。

大谷:大学で野球を続ける子は増えたね。うちも東北福祉大学に進学する子が多いよ。

稲垣:大学に行って伸びる子もいるの?

大谷:いるよ。広島カープの黒田選手(黒田博樹選手)なんてそうやん。高校でカラダが出来上がってない場合、大学でしっかりカラダをつくることもできる。その結果、大学で大きく花開く子もいるということや。

稲垣:なるほどね。カラダづくりの話が出たけど、野球のトレーニングって進化してるの? 「体幹トレーニング」がはやってるけど、取り入れたりもしてるんかな?

大谷:体幹トレーニングはやってるね。中学生やから、ウェイトトレーニングはやらせてない。

稲垣:サッカーの場合でも、中学生はあまりウェイトトレーニングはしないねん。まだまだカラダが大きくなろうとしている年代やからな。

大谷:野球でも一緒やな。

稲垣:どちらかというと、心肺機能の強化を目指したランニング主体のトレーニングが多いかな? 高校生になると骨格がだいたいできてくるから、ウェイトトレーニングとか、体幹トレーニングも入れたりするねん。

大谷:うちも同じ。とくに12月の中旬から1月いっぱいまでは陸上部に変わる(笑) 投げたり、打ったりもするけど、7割は走ってるよ。

 

 

中学2年生でMAX135キロを投げれる選手でも中学生にはほとんど投げさせない、カラダが出来ていないからだそうです

 

 

プロにさえなれば、野球で飯が食えるのか?

 

稲垣:プロ野球選手のセカンドキャリアについてやけど。

大谷:正直、大変やと思うよ。ドラフト1位でプロに入っても、活躍できなかった選手は職を転々としてたりする。契約金を8500万円もらっていても、その後が大変な選手も多いよ。

稲垣:「NOMOベースボールクラブ」の選手も、働きながら野球やってるやろ?

大谷:関西独立リーグの「ゼロロクブルズ」の選手も働きながら野球やってるで。

稲垣:サッカー界もJ3の選手は、プロ契約してる子が少ないから、働きながらやってるよね。働きつつ競技を続けている選手って、引退して指導者になる道はあるのかな?

大谷:指導者では飯食われへん。監督とかコーチになるのはむずかしくないけど、それで食っていくのはむずかしいな。

稲垣:野球界も厳しいね。

大谷:うん、厳しいよ。だから、もしかしたらプロを目指すよりも、大学に進学する道を選ぶほうがいいかもしれへん。

稲垣:野球は、セカンドキャリアがかなり厳しいイメージがするな。Jリーグよりも厳しいかもしらん。引退後って、どういうところで働くことが多いの? 現場には残れるんかな?

大谷:コーチで残れるのは一握りやで。

稲垣:そうやね、一流選手でもごく一握りって印象。ギャランティだけ考えると、野球って日本のスポーツの中で突出して高いけど、引退後はめちゃくちゃ大変そう。

大谷:よく「契約金は退職金みたいなもんや」っていう。

稲垣:退職するときは、何もないんや!

大谷:ないない。育成選手として入っても、結果が出なかったら2年でクビ。年俸も200万円から300万円てとこやね。「支度金」も同額程度じゃないかな?

稲垣:「支度金」って何?

大谷:準備するのに使うお金っていうのかな? 契約金とは別に、準備に使えるようにって渡されたりする。

稲垣:「育成選手」ってよく聞くけど、どういう扱い? 2軍じゃなくて、3軍なん?

大谷:プロ野球には「選手枠」があって、所属できる選手の数が決められてるねん。1軍、2軍あわせて70人。それ以外に育成枠っていうのがあって、育ててみたい選手は育成枠での契約になる。

稲垣:プロの選手枠から外れた選手が、地方の独立リーグでプレーすることが多いのかな?

大谷:あくまでも俺の見ている範囲だけど、独立リーグに行く選手は少ないな。ごく一部かな?

稲垣:独立リーグでは、いろんな面で厳しいってこと?

大谷:言い切れへんけど、そんな感じ。プロに入っても思うような結果が出せへん選手は、社会人野球に戻ってプレーする手もあるな。

稲垣:社会人野球って、企業スポーツとして残っている希少なケースやと思うけど…… 野球をやめたら会社も辞めないといけないんと違うの?

大谷:いや、普通に会社員として残る人もいるよ。社会人野球を維持しているのはかなりの大企業やから、子会社とかに行くパターンもあるけどね。

稲垣:ほーお。

大谷:その場合でも、いい大学出てると、待遇が変わってくる。だから大学進学したほうがいいって考え方にもなるし、就職や社会人野球入部に有利な関東の大学に進学するって選択肢が出て来るねん。

稲垣:聞けば聞くほど厳しいね。プロに入っても5年以内に引退する選手も多いよね? トライアウトも行われてるけど、厳しそうやし……

大谷:そやな、もちろんトライアウトからビッグになる選手だっているけど。でも、そもそもトライアウトは、ほぼピッチャーしか受からんしな。

稲垣:韓国、中国、台湾など、アジアにはほかにもプロ野球があるよね? 他国に行く選手もいるのかな?

大谷:行く選手もおるよ。でも、ギャラは日本ほどは高くないしな。

稲垣:メジャーリーグには選手の年金制度があるやん。日本には年金制度ってないの?

大谷:今はないけど。そのうちできるんちゃうかな? 多分、作ると思う。

稲垣:今までの話を聞いていると、高卒でプロに入って10年くらいプロ選手を続けて、そこで戦力外とかになると一番きついような気がするね。

大谷:そうやな。その時点でまだ30歳前。まだまだ人生は長いしな。

稲垣:受け皿は絶対必要やと思う。

大谷:競技だけで行ってしまうと、選手を引退してサラリーマンになるのもキツイのかもしれんね。

稲垣:大学に進学して、引退後のことも含めて、よーく考えた方がよさそうやな。

大谷:就職して野球するのもありやと思う。社会人野球で大成してる人もたくさんいるし、引退しても会社員としてしっかり働いて、充実している人も多いよ。

稲垣:「プロになる」だけがゴールとは違うんやな……

 

 

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「野球の監督」って道も相当険しい

 

稲垣:高校野球の監督さんって、有名な人も多いやんか。ギャラって結構高かったりするの?

大谷:高校によるとは思うけど、あんまりよくはないと思うよ。大学野球の監督になると、もう一段階悪いんとちゃうかな?

稲垣:サッカーも大学の監督のギャラはかなり厳しいよ。

大谷:大学の監督では、飯は食われへんって聞くね。高校の監督さんでも、無給で指導している人がいるそうやで。

稲垣:美しい話やけど……。そんなことしたら、無給とか安価が当たり前になってしまうやん。

大谷:そうやねん。別に仕事がある人か、すごいお金持ちしかできなくなってしまう。俺なんか親が商売してくれてたおかげで、こんなことやれてるけど、サラリーマンやったら絶対無理やもんな(笑)

稲垣:むずかしいな。どこも厳しいのは理解できるよ。でもちゃんと収入を確保しないと、いい指導者が来てくれへんし、新しい指導者も育たないやん。野球界にとっていいことなのか? わからんな。

大谷:ホンマにむずかしいところやねん。

稲垣:指導者って、ライセンスは必要ないの?

大谷:いらない。ただ「指導者講習会」というのはあるよ。その講習会さえ受講すれば、誰でもできる。

稲垣:サッカーだと指導者のライセンスは40万くらいかかるよ。誰でも取りに行けるわけでもないし、そもそも取得まで半年くらいかかる。

大谷:野球の講習会は1万くらいかな? 高校野球の監督さんも、この講習会受けて指導してるよ。

稲垣:「指導者講習会」が唯一のライセンスなん?

大谷:いやいやいや、ライセンスとかってもんちゃうねん。免許とか、これを受けないとなられへんとかってものじゃない。ただ、「指導するなら、指導者講習会を受講しときなさいよ」って性格のものかな?

稲垣:元プロ選手も、この講習会に参加するの?

大谷:いや、元プロ選手が指導者になる場合は、「学生野球資格回復制度」というのがあって、その研修を受ければ指導することができるようになるんや。

稲垣:野球界独特の考え方やね。いろいろ教えてもらって思うに、社会人野球ってすごく魅力あるね! プロには夢がある。それは間違いないけど、やっぱり将来を考えてしまうやんか。みんながみんな、プロで成功できないわけやし。

大谷:そうやなぁ。

稲垣:社会人野球がこの後も続くなら、魅力的な環境と違うかな? 選手を辞めてからも会社に残れる可能性がある点もうれしい。現実的なことを考えると、まずは大学に進学して、社会人野球を目指すのもありやと思う。

大谷:無理にプロに行くよりいいんちゃうかな? たとえば、ドラフトの指名を受けても、4位以降とかの下位指名やったら、そのときは断るって選択肢もいいと思う。

稲垣:まず大学に進学するわけやね?

大谷:うん、大学で体をつくる。それからプロ、上位でのドラフト指名を目指しても遅くはないんちゃうかな? プロがダメでも社会人野球という受け皿があるし、それでもだめなら就職すればいい。

稲垣:そういうことも、考えて将来設計せなアカンな。

大谷:ドラフトを受ける前に、親御さんも交えて、将来設計を考えていけたらええな。ドラフト指名を受けるような選手、またそれに近い選手は「プロ注(プロが注目してる選手の意味)」といって、ずっとチェックされてるから、大学や社会人で活躍したら、ちゃんと見ててくれるよ。

 

 

原稿17

 

 

「野球を教える」ことが監督として何より大事

 

稲垣:大阪柏原ボーイズの監督をやってる理由を教えて!

大谷:ただの野球好きのおやじや(笑)。

稲垣:少年野球に関わってる人って、そういう人ばっかりやろな!

大谷:そうやな(笑)。

稲垣:大阪柏原ボーイズはどこを目指してるの?

大谷:基本は甲子園やねん。

稲垣:それは、「高校生になって甲子園に出る子を育てたい」ということやね?

大谷:そうそう。「どこに行っても通用する子」を育てるっていうのかな? 高校でも、大学でも、社会人でも、プロでも、どこに行っても活躍できる選手になってくれたらいいなって思うね。

稲垣:そういう選手になってくれたら、理想やな。

大谷:だけど、指導としては「出られるところに行きなさい」って言ってるねん。

稲垣:「出られる」ってどういうこと?

大谷:「試合に出してもらえる」って意味。たとえば、ちょっと背伸びして、ギリギリ強豪校に入れるレベルの選手がいたとする。

稲垣:あー、学校自体が強くても、試合に出られへんかったら意味ないってことか!

大谷:結局3年間試合に出られへんかったら、何にもならへん。学校自体が甲子園に出たとしても、意味ないやろ。

稲垣:なるほど、確かにそれはそうやね。じゃ、そういう選手を育てるために、どういう指導をしていくの?

大谷:技術指導も大事やけど、ホンマに大事なのは「野球を教える」ことやと思ってる。

稲垣:野球を教える?

大谷:野球っていうか、スポーツ全般、いやそれ以外もやけど、技術だけと違うやろ。礼儀、挨拶は当たり前として、野球やったら「野球の考え方」を身につけなあかん。

稲垣:頭を使っていくってこと?

大谷:どういうふうに動くか? どうやったらすごいバッターを打ち取れるか? 頭を使わな、いいプレーなんかでけへん。そこを教えたいねん。

稲垣:「野球道」って感じがするわぁ。大阪柏原ボーイズって、何回も見せてもらってるけど、いつ来ても子供たちも、父兄の方も礼儀正しいし、それがほんまにすごいと思う。

大谷:すごい大事なことやと思うねん。

稲垣:大谷からは想像つかへんわ(笑)。

大谷:そやろ(笑)。

稲垣:でも子供たちは指導者の鏡やからな。何度も来させてもらってるけど、いつもすごいって感じる。

大谷:野球にたずさわってなかったら、悪いおっちゃんになってたと思うわ(笑)。

稲垣:僕もそう思う(笑)。 僕自身もサッカーの指導者やったけど、その頃を思い出してみると、いつも子供たちのこと考えてた。正直、ほかのこと考えるヒマもなかったわ。

大谷:飲みに行くこともほとんどないし、ゴルフもほとんど行けへんし、常に野球や!

稲垣:そうやなぁ。それで頭も気持ちもいっぱいになって、それがまた楽しいから。

大谷:そうやで。野球の指導者って、やったらハマるねん(笑)。

稲垣:満たされてるもんな。

大谷:嫁さんは大変やけどな(笑)。

稲垣:それは間違いないね(笑)。

 

 

いつものことだが、取材中でも常にグラウンドの子供たちに気を配っているところには感心させられる

 

 

チームを通じて「一緒に子育てする」気持ちで

 

稲垣:見るたびにうまくなってるよね、選手たち。

大谷:うん、周りは強豪ばっかりやから、緻密な野球せんと勝てへんしな。

稲垣:野球ってやっぱり、日本人の気質にあってるって感じするわ。大阪柏原ボーイズが目指してるところは?

大谷:全国制覇!

稲垣:ジャイアンツカップで優勝するってこと?

大谷:そや、東京にも行きたいしな(笑)。

稲垣:「野球の指導者」っていうのは、どんなもの?

大谷:うーん、「中学野球の指導者」って考えると、「男のロマン」かな(笑)。高校野球の指導者になると、生活がかかっているから、勝利が絶対条件になってしまう。「勝たせる」のは仕事やからな。

稲垣:監督もそれで飯を食ってるから「仕事」になるし、選手にとっても勝利が切望されてくるからってことね。

大谷:俺の場合は、これで飯食ってるわけじゃないから、OBの子とかが帰ってきて「監督になりたい」って言ってくれたら、うれしいな。その子がチームを率いてジャイアンツカップを目指してくれたらいい。俺はそれを応援する立場になりたいねん。

稲垣:美しいな。

大谷:うん。

稲垣:大阪柏原ボーイズって、関わってる人みんなが「ほんとに野球が好き」って感じがする。野球が好き、大阪柏原ボーイズが好き! って伝わってくるもんな。

大谷:ほんまにええ子ばっかりやで!

稲垣:スタッフも保護者も含めて、みんなでサポートしているって雰囲気やな。

大谷:うちは親御さんとの仲もいいし、みんな見に来てくれるし、すごく雰囲気はいいと思うで!

稲垣:そうやろな!

大谷:入団説明会があるんやけど、親御さんに対しては「野球を通じて一緒に子育てさせてください」っていうてるねん。

稲垣:いいね!

大谷:自分の息子は野球やらんかったんで、このチームは俺にとって、子育ての延長みたいなもんやねん。

稲垣:それも「いいね!」しときます(笑)

 

 

原稿13

 

コーチは甲子園出場経験のあるOB

 

 

インタビューを終えて

 

「人気が落ちた」「ほかの競技にファンや競技人口を奪われている」と言われることも多い野球。
しかし、今も日本のスポーツのトップをひた走っているのが野球じゃないでしょうか。プロ野球、そして高校生が目指す、春と夏の「甲子園」。圧倒的なブランドはゆるぎません。

今回は、「野球界とお金」にも着目してお話を聞かせてもらいました。オフレコもあり、お聞きした内容をすべて書くことはできませんが、かなりきわどいインタビューになったようにも思います。

人気もあって、注目度も高い野球界。プロ選手の高額年俸が話題になることもあります。動いているお金も大きいはずです。しかしごく一部の選手以外は、選手や指導者、それを支えて応援している人たちも含め、野球に関わる大部分の人たちが、厳しい環境に置かれています。
「好きだから」と、熱い気持ちで参加しているのが実情ですし、日本のスポーツ界は多かれ少なかれ、そういう情熱によって支えられてはいますが、このまま続けていくのはむずかしいというのを改めて実感します。
少年野球の現場が成り立っているのは、指導者の情熱や父兄の方々の応援があるからこそ。気持ちに支えられて成り立っていることにも感動しました。

何度も「大阪柏原ボーイズ」を見に行っていますが、僕はこのチームにある種のなつかしさを感じます。感覚的な部分ですので上手に説明できませんが、無理に説明するとすれば「大人が大人らしく、子供が子供らしい」感じを受けるんです。「忘れ去られた過去の遺物」…… 「昭和の時代に置き忘れてきてしまった、日本人のいいところ」っていうんでしょうか? そんなものが見える気がします。

大阪柏原ボーイズは、とにかく全員が礼儀正しいのに、いつも驚かされます。子供たちはもちろんですが、父兄や関係者の方もみんな礼儀正しいんです。でも決しておしつけがましい感じはなくて、とにかく気持ちいい
この雰囲気があるのは「応援する人」「指導する人」「選手」がうまくかみあった、いい環境づくりができているからじゃないでしょうか。

今回、はじめて大谷監督の夢をお聞きしました。普段は聞けない、チームや子供たちへの思い。そんな本音に触れて、僕自身もすごく心が熱くなりました。これからも陰ながら「アクリル運動部」として応援していきたいと思います。

最後に、今回はスタッフの方々や選手たち、父兄の方にもご協力いただきました。スムーズに取材ができたことを感謝いたします。ジャイアンツカップに出場の際は、真っ先に応援に駆けつけたいと思います! 本当にありがとうございました。

 

 

原稿3

コーチとして応援に来てくれていたOBの方にも、お写真を撮らせていただいきました

左:大阪柏原ボーイズOB
山形県鶴岡東高校で甲子園の出場経験もある藤井俊佑くん(現在は大阪体育大学一回生)

右:オール羽曳野OB
九州国際大学付属高校出身の野元仁くん(現在は奈良学園大学一回生)

 

 

プロフィール

 

明星中学時代の大谷監督と野球部のメンバー(前列左から2番目が大谷監督)

 

ゲスト : 大阪柏原ボーイズ 監督 大谷昌之さん

マルマサ食品、代表・・・ 焼肉のタレ「仁王」の製造卸業

大阪明星学園中学校野球部出身

 

聞き手 : 稲垣圭悟

大阪府出身 八尾市在住

JA団体職員、サッカーコーチを経て平成14年より樹脂業界に、経理や事務が得意でスポーツ好きの加工屋のおやじです

近畿大学体育会サッカー部出身

元ガンバ大阪 コーチ

元大阪府農業協同組合中央会 団体職員

元財団法人日本サッカー協会B級コーチ

元日本体育協会公認コーチ

共栄化学工業株式会社(アクリルの加工屋) 代表取締役

アクリル運動部株式会社 代表取締役総監督

協賛している団体:大阪エヴェッサ、PSA ASIA、大阪産業大学体育会サッカー部、日本こどもフィットネス協会

 

ライター : 目片雅絵

京都出身、滋賀・彦根在住 アパレル、プログラマ、WEB製作などを経て 2003年よりフリーライター 得意分野は歴史系、インタビュー

現在は広報アドバイザーとして、 会社、お店、個人事業の広報、情報発信の アドバイス、サポートを行っている

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こんにちは! アクリル運動部:総監督の稲垣です 僕のブログを読んでいただき感謝、感謝です! 以前はガンバ大阪のコーチとしてグラウンドをこどもたちとかけまわってました。 現在はアクリルなどの樹脂を専門で加工する加工屋「共栄化学工業株式会社」の3代目です。 アクリル運動部は、とにかくスポーツが大好きなのでスポーツに関わりたい、そしてプロスポーツの現場にいた人間として、スポーツ選手や関係者の方の応援をしたいという思いからです。 プロの加工屋としてどんな形でスポーツ振興に貢献できるか楽しみです。 いろんなスポーツと関わって僕自身も楽しみたいと思っておりますので、 気軽にお声賭けくださいね! 略歴 元ガンバ大阪コーチ 元日本サッカー協会B級コーチ 元日本体育協会公認コーチ
六道プロジェクト アクリル運動部 アクリル購買部 共栄化学工業 アクリル運動部スポーツクラブ