ついに出た!「月刊アクリル運動部創刊号」ゲスト:スノーボード PSA ASIA会長 藤宗毅

「月刊アクリル運動部」いよいよ始動!

 

スポーツを「する」のも好きですが、「見る」のはもっと好きでした。スポーツを観戦して楽しむだけでなく、見ることでもさまざまな気付きがあります。たとえばスポーツの種類によって、体の使い方や重心位置が異なることもわかります。スポーツをするうえでも、指導する立場でも、じっくり見て得た気づきが役立ちました。 現在は「する」「見る」に、スポーツを「聞く」という、もっともっと大好きな要素が加わったのです。

アクリル運動部の活動では職務上でも、雑談でも、スポーツや選手について、業界についてなど、いろいろなお話をお聞きするようになりました。

華やかな面や楽しい点の話題も多いですが、課題や、困ったことなど、裏話的なお話もあります。こうして得た情報を元に、いい部分をもっと伸ばし、同時に困っている点を改善・解消する。そんなお手伝いや提案をするのが「アクリル運動部」の活動です。

今回創刊する「月刊アクリル運動部」では、アスリートや指導者、関係団体など、さまざまな立場でスポーツに関わっている方と対話し、その思いや目標、課題などをていねいにお聞きしたいと考えています。対談を通じてそれぞれの競技に対する認識を深め、思いを広く伝えていくのが目的です。

 

記念すべき第一回目の対談は2016年9月21日。お相手はプロスノーボーダーで、「PSA ASIA」現会長の藤宗毅(ふじそうつよし)さんです。

 

藤宗会長とは2013年の秋ごろからのお付き合いになります。共栄化学工業のスポーツ事業部で、プロスノーボードの大会で授与する「表彰盾」をつくったのがきっかけです。僕たちが提案したのはただの盾ではなく、「チャンピオンボード」というオリジナルの盾。スノーボードのカタチをしたアクリル製で、自分でいうのもなんですが、とってもカッコいい盾でした。

「チャンピオンボード」の提案や作成の打ち合わせの席でお互いにいろいろな話をしました。藤宗会長からはスポーツ界のことスノーボード界のことをお聞きし、僕らは「どうしてこんな活動をはじめたのか」「何を目的にしているのか」などをじっくり語らせてもらいました。温厚で物腰やわらか、しかし時折見えるキリッとした表情に現役時代が垣間見えます。まぁ僕は現役時代は存じ上げなかったりするのですが。

 

目次

  • 藤宗毅氏に聞く! 「PSA ASIA」って何?
  • 解説 「アルパイン」「フリースタイル」「スノーボードクロス」とは?
  • 年間試合数や賞金ってどうなってるの?
  • 会員数減少から一転! 増加につながった理由は?
  • 解説 スノーボードの「プロ」資格を取得するには?
  • 「プロスノーボーダー」と「ライダー」って違うの?
  • これからのPSAやスノーボードの未来はどうなる?
  • インタビューを終えて
  • プロフィール

 

 

PSA ASIA現会長 藤宗毅氏

藤宗毅氏に聞く!「PSA ASIA」って何?

 

前置きと説明が長くなりましたが、いよいよ藤宗会長のインタビュー開始。しかし、お越しいただいてからも共通の趣味であるゴルフの話題や雑談で盛り上がり過ぎ、藤田HCに「早くはじめてください!」と釘を刺されてしまいました。(笑)

 

稲垣:まずは、「PSA ASIA」という団体についてお聞かせいただきます

藤宗:「PSA ASIA」は「プロスノーボーダーの資格を認定し、会費や協賛金によって大会を運営している非営利団体です。かんたんに言えばプロスノーボーダーの選手会です。今年で22年を迎えます。

 

主だった活動は4点

 

・プロ資格認定

・大会運営

・協賛集め

・ファン獲得

 

といったところでしょうか。

 

「PSA ASIA」の4つの活動、まずはプロ資格の認定です。認定されると、PSAの会員資格が得られます。会員は大会に参加する権利を得ます。

「PSA ASIA」の運営全般、とくに重要な大会の開催や賞金などは、企業や個人の協賛によって支えられています。協賛企業からは、協賛金という形式以外の支援もあります。たとえば中山間地域の活性化、リゾート再生のマックアースさんからは、マックアースさんが管理する34のリゾート地で使える、「シーズンパスポート」を提供していただきました。パスポートは会員、つまりプロ選手に配布され、練習場所の確保などに役立っています。

ファン層拡大としては、ユーストリームによる大会の動画配信などが中心。スノーボードへの関心を深め、さらに活性化させるために重要な活動です。

 

稲垣:PSAの主な活動のひとつが、各地でプロの大会を行う「ツアー」でしょ。大会を現地や動画で見ると、他の競技とは違った演出があるように感じますが。

藤宗:PSAはプロ選手の団体ではありますが、実はスノーボードの選手には、イベントプロデューサーなどの運営面、演出面での経験豊富なエキスパートが多いんです。もともとイベント運営の経験がある選手たちが、「どうすればもっとよくなるのか」「ファンや協賛の方々、そして選手自身が喜ぶのか」を考え抜いていますので、大会運営という面では、違いが出てくる感じはあります

稲垣:たしかにスノーボードの大会は、「競技会」というよりも「イベント」といった面が強いように思います。しかもそのイベントのレベルが高いですよね!

藤宗:プロの大会ですから、競技性の高さはもちろん求められると思います。しかし、大多数の会員は競技性だけでなく、プラスアルファを求めているように思うんです。その期待に応えるために、理事会では試行錯誤を重ねています。PSAは選手団体ですから、「会員のプラスになる」「会員のためになる」という点が大事。理事会のメンバーは全員、「会員のため」という意識を強く持っています。

稲垣:理事は何名いらっしゃるんですか。

藤宗:僕を含めて8名で運営しています。理事はそれぞれ各カテゴリーを担当しています。カテゴリー、つまり競技種目は「アルパイン部」「フリースタイル部」「スノーボードクロス部」の3種で、フリースタイルはさらに「ハーフパイプ」「スロープスタイル」「ストレートジャンプ」に別れます。

 

アクリル製優勝盾「チャンピオンボード」

解説 「アルパイン」「フリースタイル」「スノーボードクロス」とは?

 

「スノーボード」には、さまざまな種目があります。種目によって競技内容が大きく「タイム」「演技」「競争」と異なる。「フリースタイル」は表現力や着想力の豊かな10代若年層の活躍が目立ち、「アルパイン」「スノーボードクロス」はアスリートとして完成された世代が背負う。

 

稲垣個人の見解としては、「フリースタイル」はエンターテインメント性が高いアメリカ系、「アルパイン」や「スノーボードクロス」はヨーロッパ系のイメージ。

 

  • タイムを競う「アルパイン」

 

代表的な選手:

 

・竹内智香選手

「ワールドカップ2012-2013シーズン」パラレル大回転初優勝
「ワールドカップ2013-2014シーズン」世界ランキング2位
「ソチ五輪」銀メダル

 

  • かっこいい技を成功させて演技で得点を競う「フリースタイル」

 

「ハーフパイプ」が発祥、「スロープスタイル」「ストレートジャンプ」が派生した。「ストレートジャンプ」はソチ五輪の時点では、オリンピックの競技種目に入っていないが、2018年開催の「平昌五輪」では、「スノーボードクロス」とともに競技種目になるかもしれない。

ストレートジャンプは、2014年まで行われていた日本最大級の国際大会「TOYOTA BIG AIR(トヨタビッグエアー)」が有名。スキーのジャンプ台ほどの高さから、ありえないくらい回転するスーパーな競技。「角野友基」で検索して、人間技とは思えないくらいスゴイ動画を見るのがオススメ。

 

代表的な選手:

 

・平野歩夢選手(ハーフパイプ)
「ソチ五輪」銀メダル(最年少)
「2013XGames」銀メダル

 

・平岡卓選手(ハーフパイプ)
「ソチ五輪」銅メダル
「2015XGames」銀メダル

 

・鬼塚雅選手(スロープスタイル)
「2015年世界選手権」優勝(史上最年少)

 

・角野友基選手(ストレートジャンプ)

 

  • ひとつのコースをみんなで競争「スノーボードクロス」

 

代表的な選手:

 

・藤森由香選手
2016年の各世界大会で上位入賞

 

 

14407791_553367378204572_846232313_o

年間試合数や賞金ってどうなってるの?

 

稲垣:試合数は年間どのくらいですか?

藤宗:2015-2016シーズンは、雪不足で13試合しかできませんでしたが、従来は男女合わせて16試合です。

稲垣:こんなのことお聞きしていいのかな? 賞金総額はどれくらいなんですか?

藤宗:大丈夫ですよ、スポンサー様から集まる協賛金に応じて前後します。今はトータルで年間1200万円前後です。

稲垣:ちょっと余談になっちゃいますが、大会に「冠」をつける、たとえば「アクリル運動部カップ」のような大会を開くとしたら、どれくらい必要ですか(笑)

藤宗:「スノーボードバブル」といわれた当時は、「冠をつける費用はいくら」といったスポンサー料が決まっていたようです。しかし、次第に「○○カップを開催したい」という声もなくなり、スポンサー料という考え方もなくなっていきました。

稲垣:それは残念ですね。

藤宗:残念ってわけでもないんです。今は「スポンサー料」というよりも、PSAの活動やスノーボードというスポーツに興味を持って、「応援したい」と賛同してくれる企業や個人の方たちが支えてくれています。彼ら「有志」が支えてくれる大会ですから、すべての大会が「有志カップ」って感じかもしれませんね。

稲垣:「有志」って、なんかいいですね

藤宗:「スポンサーする」という行動にはいろんな意味があります。たとえば「広告」が目的の場合もありますよね。でも今は「スノーボーダーのため」「スノーボード界の発展のため」に協力してくださっている方が多くなってきました。この変化っていうのは、選手には一番響いて欲しいところです。

稲垣:純粋に応援したいって気持ちがうれしいですね

藤宗:大きな流れは「有志カップ」に変わっていますが、今でももちろん「○○カップ」は開催できますよ。今は1つの大会の賞金総額が100万円くらいになってますから、その賞金を全額出してもらえるなら冠大会も可能です。ぜひ「アクリル運動部カップ」を開催しましょう(笑)

稲垣:(笑)。業界全体に変化が訪れている感じですか?

藤宗:「業界」というよりも、「時代の流れ」にあわせた変化なのかもしれません。僕が現役時代はまさにそうだったんですが、たくさんのスポンサーがついて、賞金や運営がすごく順調だった時代がありましたよね。車のメーカーも3社くらいついていましたっけ。

稲垣:メディアにもたくさん登場していた時代ですね。

藤宗:目新しくてマスコミ受けしましたからね。でもそんなスノーボードにも陰りが見え始めます。話題性がなくなって、スポンサー探しも大変になりました。状況が変わるにつれて、PSAの運営も変化していかざるを得なくなりました。

稲垣:世の中の変化に合わせて、運営も変化していった……

藤宗:会の活動でも、大会運営でも、ただ「開催する」「運営する」でよかった時代から、「しっかりプロデュースして盛り上げる」時代になったと感じています。大会も「○○カップ」から「有志カップ」になりましたし、大会の雰囲気も変わりました。変化しなければ、会の運営は立ち行かなくなっていたと思います。

稲垣:なるほど

藤宗:「変わらざるを得なかった」という見方もありますが、とてもいい方向に変わっているんじゃないかとも思います。

 

 

藤宗さんご本人の画像です!

会員数減少から一転! 増加につながった理由は?

 

稲垣:新たな大会運営の方法など、改革を進められていますから、会員数は年々増加しているんじゃないですか?

藤宗:それが、会員数はずっと減少傾向で、それが悩みのタネになっていたんです。6年前に会長になった時点の会員数は400名弱。それが毎年10名程度減ってしまって、一時は330名くらいになりました。「どうしたら会員数が維持できるんだろう」と悩んでいたんです。でも、昨年から回復して、なんと400名弱まで戻りました。

稲垣:何があったんですか?

藤宗:マックアースさんという、協賛企業さんから「最強のシーズンパス」をサポートしていただいたのが大きいです。このパスのおかげですね。でもこれは、ひとつの流れだと思うんです。

稲垣:「流れ」ですか?

藤宗:これまで、スキー場の運営はワンオーナーが主流でした。しかし、近年スキーが斜陽産業になってしまい、経営が立ち行かない状態になってきたんですね。

稲垣:スキー場運営では食って行けなくなってきたんですね。

藤宗:斜陽となったスキー場を助けたいと立ち上がったのがマックアースという会社の一ノ本会長です。一ノ本会長は「スキーを衰退させてはいけない」「スキー場をつぶしてはいけない」との一心で、スキー場を救うべく、運営を手がけておられます。運営しているスキー場の数は徐々に増えて、今年で34リゾートになったんです。

稲垣:すごい! とんでもない数ですね。

藤宗:そうなんです。マックアースさんが運営する34リゾートすべてで使える「シーズンパス」が誕生したんですが、そのシーズンパスを協賛していただくことになりました。プロが自由に滑れる場をプレゼントしてくださったんです。

稲垣:すばらしい! マックアースさんが再生しているスキー場はお客さんも増えていますよね。僕が家族で毎年行っている岐阜県の「ひるがの高原スキー場」も以前はガラガラだったんですが、最近は増えています。

藤宗:選手時代は高鷲エリア、つまり岐阜県郡上市周辺で活動していたんですが、たしかにひるがの高原スキー場は人が少なかったですね。

稲垣:数年前までいつもがらっがらだなという感じで。練習にはもってこいでしたけど(笑)

藤宗:今は駐車場もいっぱいになってますよね

稲垣:34リゾートで使えるシーズンパスが起爆剤になったってことですね。ところで、PSAの会員資格や会費ってどうなっているんですか?

藤宗:大会で勝ち上がり、プロ資格の基準を満たせば会員になれます。年会費は継続会員で6万8000円、初年度は入会費・登録料もあるので8万3000円。これはずっと変わりません。

稲垣:「高い」という声もあるようですから、もっと高いのかと思っていました。

藤宗:そういっていただけるとほっとします(笑)

稲垣:ひと月にすると、5600円。プロとして活動するための経費と考えれば、妥当な金額にも思えます。

藤宗:会員になれば、プロの大会に出て賞金を得る権利が得られます。優勝賞金は50万円ほど。試合に勝てば、十分まかなえる金額ではありますが……

稲垣:プロのライセンスで得るものは、大会参加権や賞金だけじゃありませんよね。ゴルフでもプロテストに合格したプロは1000人以上いますが、ツアープロになれるのは50人。試合の獲得賞金だけで生活できるのは、ごく一部です。ほかのプロは、レッスンプロをしたり、ギアを開発したり、コーチになったりして生計を立てています。プロ試験やプロ資格制度のあるスポーツは、すべて同じじゃないでしょうか。

藤宗:そうですね、スノーボードも同じです。

稲垣:試合に勝つのは大事なことですが、それだけが「プロ」ではありませんし、ほかの方法もあります。たとえば試合に勝てなくても、ファンをたくさん獲得できれば、プロとしての価値が高まってスポンサーがつくこともありますよね。「競技に関わって生活する」「競技を生業にする」のがプロで、そのベースがプロ資格じゃないでしょうか。

藤宗:「大会に出る」「勝つ」「賞金を得る」のは、プロとしてもちろん大事なことですが、決してそれだけではない。この考え方は、選手としてガンガン活躍している間はなかなか気づきません。しかしそういう視点も大事だと思います。

稲垣:先程、「PSAは選手会」とお聞きしましたが、「日本スノーボード協会(JSBA)」もありますよね? このふたつの組織はどういう住み分けになっているのでしょう?

藤宗:最初にできたのはJSBAです。今年で発足35年になりますが、アマチュアスポーツとしてのスノーボードの普及や、検定バッヂ認定などの競技向上、指導者養成が目的です。大会も主催しますが、基本はアマチュアの大会ですね。

稲垣:アマチュアとプロとの住み分けですね。となると、オリンピック選手の強化はJSBAが主体ですか?

藤宗:実はオリンピックの強化は「日本スキー連盟(SAJ)」が主体なんです。長野オリンピックからスノーボードが正式種目になったんですが、そのときにSAJが強化を受け持つことになりました。

稲垣:オリンピックの強化選手になるとどうなるんですか?

藤宗:まずはSAJに会員登録してもらいます。PSAはJSBA会員でもありますので横並びなので会員登録は同じですが、SAJは別ですから。

稲垣:SAJって、スキーもスケートもジャンプもノルディックもすべて担当してるんですね! そう思うと、ものすごいお金が動いている気配がします(笑)

藤宗:(笑)

 

藤宗さんご本人の画像です!

解説 スノーボードの「プロ」資格を取得するには?

 

 

PSAはプロ資格を持ったスノーボーダーの選手会。プロ資格はどうすれば取得できるのだろうか。

 

  • プロ資格をとるには?

 

・JSBA(日本スノーボード協会)の大会で勝ち上がる

・PSAが開催する大会の「プロの部」で勝ち上がる

 

PSAの大会はオープン競技会ではないが、「アマチュアの部」と「プロの部」にわかれているため、アマチュアでも「アマチュアの部」なら参加できる。

 

アマチュアの部で上位入賞すると、同時に開催されている「プロの部」にもエントリーできる。この「プロの部」で上位入賞を果たすと、プロ資格が得られる。

 

「大会で勝ち上がる」という点では同じだが、プロ資格取得には、大きくふたつのルートが存在している。

 

 

藤宗さんご本人の画像です!

「プロスノーボーダー」と「ライダー」って違うの?

 

稲垣:スノーボードのプロは「プロスノーボーダー」ですよね? でも「ライダー」って言葉も聞きます。「ライダー」と、「プロスノーボーダー」との違いを教えてください。

藤宗:きっちりとした定義はありません。僕の感覚で説明すると、ショップや企業のサポートがついている人が「ライダー」。たとえば、僕は「HASCO」という企業にサポートしてもらっているので「HASCOのライダーです」って言います。プロは自分を「プロスノーボーダー」とも言いますし、「ライダー」とも言いますね。

稲垣:ってことは、プロスノーボーダーのなかで、サポートしてもらってる人が「ライダー」ですか?

藤宗:PSAのメンバーでなくても、ショップやメーカーのサポートを受けている人はみんな「ライダー」ですね。「ライダー」はひとつの称号みたいなもので、「僕は○○のライダー」「あの人は○○のライダー」って感じで使います。

稲垣:「ライダー」と「プロ」とは直接的な関係はないんですか!

藤宗:プロにも、プロじゃない人にもライダーはいますから、関係はないですね。スノーボードって「楽しい」「かっこいい」を追求するなかで育まれたスポーツなので、「○○のライダー」っていうのは、かっこいいんです。僕も「いつかはライダーになりたい」って思いましたよ。

稲垣:あこがれの存在なんですね

藤宗:僕は、ヒューマンアカデミーでスノーボードカレッジの講師を務めているんですが、学生さんの口から「○○のライダーになりたいです!」という表現が出てきます。まずライダーがあり、その先にプロがある感覚。最初に目指すのがライダーってことです。「ライダー」は登竜門…… いや通過点かな。僕も同じように思っていましたから、彼らの気持ちはすごくわかります!

稲垣:(笑)

藤宗:スノーボードやスケートボード、サーフィンなど、板に対して横向きに乗るスポーツを「ヨコノリ」って言うのは、稲垣さんならご存知かと思います。ヨコノリに共通の感覚を「ヨコノリズム的」なんて言うんですけど、「ライダー」って存在や位置づけは、すごくヨコノリズム的かもしれませんね。

稲垣:ヨコノリズム的…… ですか?

藤宗:一般的なスポーツって、「アマチュア」と「プロ」とがパキっとわかれていますよね。でもスノーボードには、アマチュアとプロとの間に「ライダー」があるって感覚なんです(笑)。プロになるまでのところに、ワンクッションあって、そこにかっこよさがあるっていうのかな?

稲垣:たしかに独特の感覚かもしれません(笑)

藤宗:ライダーがもう少し発展して、たとえば大会に出て勝つライダーになるとプロになる。あるいはライダーでありつつ、オリンピックを目指すような存在になれば、ライダーを超えた選手になるという感じでしょうか。「スノーボードでお金を稼ぐ」ことが「プロ」だとすれば、PSAの会員ではなくても、いろんな活動でお金を稼ぐライダーはたくさんいます。たとえば、映像を作ったり、写真を撮影したり。そのすべての入口は「ライダー」なんじゃないでしょうか。業界や選手というか、スノーボーダーの感覚としては、多分大きくはずれてないと思います(笑)

稲垣:なるほど! もうひとつ気になることがあります。ライダーでありつつ、そのメーカーの営業って人も多くないですか? 選手と営業、二足のわらじってことですよね。

藤宗:そうですね、○○のライダーで、○○の営業も担当する人が増えていますね。これも時代の流れじゃないかな。僕の現役時代は「滑り手」と「応援するメーカー」がわかれていました。最近は、「一緒になってやりましょう」という流れになっています。メーカーが売れないと応援や協賛ができません。サポートされる側としても商品が売れて欲しいという気持ちがあります。両者の思惑がマッチした結果、ライダーがメーカーの営業も担う時代になってきているんです。

稲垣:なるほど、お互いの「こうしたい」がマッチしたんですね。

藤宗:正直そういう動きができるライダーは、「滑っているだけ」「上手いだけ」ではありませんので、息が長く活躍できます。業界で生き残っていくためには、多方面での活躍が必要だと感じています。そのための資格が「プロ」であり、長く応援してもらうために「営業」という形があるんじゃないでしょうか。

稲垣:400名も会員さんがいらっしゃいますから、役立つ事例はたくさんあるんじゃないですか?

藤宗:そうなんです。たとえばプロ選手が「ディガー」をすることも多いですよ。ディガーっていうのは、スノーボードパークの設営をする人のこと。「僕がディガーやってます」って発信することによって、他のパークと違った特徴を生み出しているんです。

稲垣:「○○プロが作ったパーク」で滑れるってことですもんね。来場者にとっても、スキー場にとっても嬉しい活動。選手にとってもいろんな意味で、ありがたいお仕事じゃないでしょうか。

藤宗:生計を立てるだけじゃなくて、ファンサービスやファン獲得という点からもプラスになります。スキー場で働くことで、練習もしっかりできますから、嬉しい関係性ですね。

 

 

14446351_553367384871238_1519307493_o

これからのPSAやスノーボードの未来はどうなる?

 

稲垣:会員さんは増加傾向だと伺いましたが。

藤宗:新規加入する会員は年間50人程度。それはあまり変わりません。継続する会員さんが増えたのが、会員数増の理由ですね。マックアースさんの提供してくださっている「シーズンパス」が大きなインパクトになったことは、先程お話したとおりです。

稲垣:34のスキー場が利用できるようになったんですよね。

藤宗:それに加えて、吉田安亨プロの紹介で長野県の「北志賀小丸山スキー場」、内山ミエプロの紹介で新潟県の「キューピットバレイスキー場」、この2カ所も会員に開放してもらえることになりました。こういった新たな形式でのご協力が、継続会員増加のパワーになっています。

稲垣:雪国に住んでいて、自分のコースがあるプロも多いとは思いますが、雪山のない地域、たとえば大阪のライダーにとっては練習場所の確保が大変。無償のシーズンパスは、選手にとってありがたいですよね。

藤宗:そうなんです。これまでは会員数を増加するための施策として、「より良い大会を開催する」「賞金を少しでも上げる」というアプローチにばかり意識が向いていました。しかし、「PSA会員」でいることのメリットを打ち出すことも重要だと気付かされました。

稲垣:「会員になると、具体的にこんなプラスがあるよ」って知っていただくってことですね。

藤宗:とくに「フリースタイル」という競技は、若手が目覚ましい活躍をみせていて、10代のプロもたくさんいます。そんな若い選手の親御さんに無償のシーズンパスは大絶賛してもらってます。未成年の選手は「スキー場で働きながら練習する」というわけにもいきませんからね。

稲垣:いわば親御さんが選手のスポンサーですから、練習場所が無料になるのは本当に嬉しいでしょうね。親御さんの負担が減りますから、競技人口も増えそうですね。

藤宗:さっきは「プロは滑っているだけじゃダメ」と言いましたが、その反面「プロは滑ってナンボ」でもあるんです。スポーツとして考えるなら、むしろそれが正解。スノーボード選手っていうのは、「できるだけ長くスキー場にいて、たくさん滑らなきゃダメ」って面があるのはたしかです。

稲垣:練習の機会を増やすのが大切なんですね。でもスノーボードは「ちょっと練習に行ってきます」みたいな環境じゃありませんから、「フリーパス」はすごく明るい材料ですね。

藤宗:これを機会に、選手層がさらに広がっていくと嬉しいです。

稲垣:最後に、PSAの未来についてお聞かせください。

藤宗:「会員のために何ができるか」を考え続ければ、未来が開けるんじゃないかと思います。まず会員が輝ける環境づくりをする。輝く会員に惹かれてファンが増える。ファンが増えることで組織やスノーボード界が発展する。そんな流れです。

稲垣:理想的ですね!(笑)

藤宗:「継続は力なり」「好きこそものの上手なれ」が僕のモットー。スノーボード業界は「好き者」の集まりです。どこまで「好き」を追求できるかが、組織の継続や発展につながるのではないかとも思います。

稲垣:継続するのが一番難しいですからね。何か変化してよくなっても、人間はすぐその状況に慣れてしまいます。次にはよくなった現状に対して不満を感じてしまう。人間は満足しない生き物ですから(笑)。だから夢やビジョンが必要なんですよね。

藤宗:会員や選手のために、業界のために、ファンや支援してくださる方のために、夢やビジョンを描き続けて、いい未来を築いていきたいと思います。

稲垣:ありがとうございました

 

 

インタビューを終えて

 

組織の継続や発展について話は終わらず、この後も熱いお話は続きました。

 

今回のインタビューでとくに印象的だったのは、「会員数の増加」についてのお話です。

会員の減少をなんとか食い止めたいと、大会運営のクォリティー向上に取り組んでいた運営陣。もがきにもがくなかで見えた光明は、スキー場で自由に滑れる「シーズンパス」だったのです。スノーボードの魅力はスキー場、つまり競技や練習の「現場」にあり、会員に訴求できる魅力もやはり「現場」にあったということです。

業界としては競技の魅力をアップすることも大切です。競技の裾野を広げたり、ファンや応援してくれる人を増やしたりといった活動も積み上げていかなければいけないところです。しかし「会員数増加」「継続会員の確保」などの点だけから考えると、大会の運営や賞金アップではなく、シーズンパスがパワーになりました。PSAの「会員」はスノーボードのプロ。現役の選手たちです。運営側が考える「魅力」と、選手の望む「魅力」が少し異なっていたというのは、すごく考えさせられるエピソードでした。

 

何かを続けていくなかで、どうしても苦しい時が出てきます。何をしてもうまくいかないとき、どうしていいか誰もわかりません。でも「わからないから」と、放置すればどんどん悪くなってしまいます。ですから、わからないなりに動く人が必要。それが藤宗会長に課せられた責任だったのかもしれません。

この動きは「自分で狙って起こしたわけではない」とおっしゃってました。しかし、藤宗会長のもと、理事や委員のみなさんが一体となってこの6年余りの期間、動き続けた結果ではないでしょうか。

スノーボード界は、世界大会での活躍が目覚ましい業界です。底からあがり出したスノーボード界、特にPSAをこれからも応援して行きたいと思います。

 

 

 

プロフィール

藤宗さんご本人の画像

ゲスト:PSA ASIA会長 藤宗毅さん

スポンサー

SANTA CRUZ,AA,CELTEK,ARK,Humanアカデミー,高鷲接骨院,619 movement of genuine,マックアース

 

略歴

2000年 プロ昇格

2001年 JAPAN OPEN 3位

2002年 NIPPON OPEN Pre-Qualify 3位

2003年 HUMAN CUP 優勝

2005年 ALBILEX CUP 優勝

2005年 HUMAN CUP 3位

2007年 JMGスーパーパイプクラシック 準優勝

2007年 HUMANプレゼンツ高鷲チャンピオンシップ 準優勝

2008年 GUSH CUP 3位

2009年 現役引退

 

PSA ASIA フリースタイルツアーランキング

 

2001年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング5位

2002年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング3位

2003年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング3位

2004年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング1位

2005年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング33位

2006年 PSA ASIA SNOWBOARD PRO TOUR ランキング1位

2007年 PSA ASIA SNOWBORAD PRO TOUR ランキング3位

 

コーチング歴

 

2005年から現在

HUMANアカデミースノーボードカレッジの講師をはじめ、愛知医科大学スノーボード部、慶応大学ナダレスノーボードの専属コーチを10年以上務めている。

 

聞き手 : 稲垣圭悟

大阪府出身 八尾市在住

JA団体職員、サッカーコーチを経て平成14年より樹脂業界に、経理や事務が得意でスポーツ好きの加工屋のおやじです

近畿大学出身

元ガンバ大阪 コーチ

元大阪府農業協同組合中央会 団体職員

元財団法人日本サッカー協会B級コーチ

元日本体育協会公認コーチ

共栄化学工業株式会社(アクリルの加工屋) 代表取締役

アクリル運動部株式会社 代表取締役総監督

協賛している団体:大阪エヴェッサ、PSA ASIA、大阪産業大学体育会サッカー部

 

ライター : 目片雅絵

京都出身、滋賀・彦根在住 アパレル、プログラマ、WEB製作などを経て 2003年よりフリーライター 得意分野は歴史系、インタビュー

現在は広報アドバイザーとして、 会社、お店、個人事業の広報、情報発信の アドバイス、サポートを行っている

「LA BICICLETA」

「LA BICICLETA」はこちら

 

 

 

アクリル運動部オフィシャルホームページはこちら

アクリル運動部バックタイトル

 

アクリル運動部オフィシャルWEBショップはこちら

大

 

アクリル加工2時間見積もりの共栄化学工業のホームページはこちら

共栄化学トップ写真

 

 

 

The following two tabs change content below.
こんにちは! アクリル運動部:総監督の稲垣です 僕のブログを読んでいただき感謝、感謝です! 以前はガンバ大阪のコーチとしてグラウンドをこどもたちとかけまわってました。 現在はアクリルなどの樹脂を専門で加工する加工屋「共栄化学工業株式会社」の3代目です。 アクリル運動部は、とにかくスポーツが大好きなのでスポーツに関わりたい、そしてプロスポーツの現場にいた人間として、スポーツ選手や関係者の方の応援をしたいという思いからです。 プロの加工屋としてどんな形でスポーツ振興に貢献できるか楽しみです。 いろんなスポーツと関わって僕自身も楽しみたいと思っておりますので、 気軽にお声賭けくださいね! 略歴 元ガンバ大阪コーチ 元日本サッカー協会B級コーチ 元日本体育協会公認コーチ
六道プロジェクト アクリル運動部 アクリル購買部 共栄化学工業 アクリル運動部スポーツクラブ